「氷点」「続・氷点」/三浦綾子

会社の人が借してくださったもの。
 
ほんと〜〜〜に「人間」を描いてるよね。
最終的にはキリスト教の伝道本のようになってしまうのは、作者がそういう信条の人だからしょうがないが、よくぞ各登場人物の心情をあそこまで裏の裏まで書ききったもんだ。
 
と今さら偉大な三浦綾子という作家について驚いている私。
 
以下、感想。と言っても、「人間は結局弱いものですから」とすべてを許す視点もあり、ってのは判ってはいるが、だがしかし、ここはあえて登場人物の好き嫌いだけを書くw
 
読んだ人にしか判らんような書き方するけど、わたしゃ啓造が嫌いだ。これはもう普通に。
途中まで夏枝が嫌いだったけれど、ああいう浅い人は、多分自分のことで悩むことは少ないと思うので、まあ、あれはあれでいいのではないかと思う。
けど啓造はなあ。
何だか悩み癖がある系に自分を分類しているわりに、妻の夏枝を薄っぺらいとか冷たいとかすぐ裁断するくせに、あんたもどうなんだよ、とだんだん腹が立ってきた。
例えばだな、これは自分が女だからかも知れないが、陽子を妻への復讐のために引き取るけども、結局自分も可愛がることができずにいたくせに、陽子が娘(女)らしくなって美しいと判ってからころっと変わって可愛がるようになるという、あまりに「男って……」な反応とか。結局性的な理由ですかい、あんたは、聖人ぶって、みたいな。
(性的な気持ちが根底にあって陽子をかわいがるようになったことは、啓造自身が認めていて、そういう描写が何度かある。)
あと、よく夏枝は信用できない、秘すべきことをすぐに人に言う、みたいなことで、息子の徹と「だから母さんはだめだよね」みたいなことを言ってるけど、徹にはそう言う資格はある、だがあんたにはない! と思う。
と書いてたらよけい嫌いになってきたw
って言うかあれはどう考えても作者は読者が啓造を嫌うのを狙って書いてるとしか思えないw
由香子(だっけ)、途中で目の見えなくなった人、あの人に関することも、再会したへんではそれこそほんとに抱きしめたいくらい愛しい、みたいに啓造の心理を描写してるけど、少し時間が経ったら、そんなふうに思ってたなんて忘れてしまったように遠い感じがする、とか書いてあって、「ちょwww啓造現金すぎwww」だった。
 
陽子はすごすぎる人だけど、嫌いではない。
何度も「若い女性ゆえの潔癖さ」という表現が出てくるけど、それだけでもない、彼女の性格上の潔癖さとか、それは愛すべきものだと思う。
最終的に彼女は、心のほうで愛している相手ではないほうの人を選ぶけど、私はあの理由は、あれはあれで正当だと思うし、多分三浦綾子の言いたかったことのひとつ、「愛は意志である」、これにも賛同する。
たまに弟の達哉に対しての甘すぎる態度にいらいらしたけれども、まあ、生まれて初めて接した肉親であれば、そんなものかな、とも思う。
 
あとは、私は北海道行ったことないけど、厚い文庫本4冊ぶん、北海道を舞台にしたものを読んだら、何となく行ったような心持がした。
啓造と友人の高木が京都に来たとき、ふたりが、ここに比べると北海道はいかに(気候的に)厳しい環境か、というようなことを語っていて、何だろう、北海道の情景描写をどれだけ並べられるより、この京都でのくだりひとつのほうが、北海道のイメージを理解するには直感的に判りやすかった。
 
もっとちゃんとした感想書くつもりだったけど、何か思ってたのと全然違う感想になっちゃったw