「キングがいく-MACHINE HEADによる被害報告編」2

下記はSLAYERとMACHINE HEADを茶化すために書いたフィクションです。

2.
 7年前、MACHINE HEADはアメリカのヘヴィロックシーンに颯爽と登場した。その登場はメタル新時代の到来と評され、実際、その楽曲は強力だった。中心人物のロブ・フリンは、その個性的な咆哮ボーカルスタイルと強気な発言で、音楽雑誌でも話題になったものだ。
 当時、デイヴはメンバーではなかったが、1年後に加入。大きな可能性のあるこのバンドに入れたことは、彼のドラマー人生にとっても重要な転機になった。
 が。
 いざ入ってみて拍子抜けしたのは、リーダー、ロブの実像だった。
 普段はアイディアに満ち、行動力・責任感に溢れ、それでいて細かいところまで気が回る。ほぼパーフェクトな男なのだが、野性的な外見とまったく釣りあわない繊細さを持っている。ミュージシャンには不可欠な資質なのだろうが、この繊細さが、ときに仇となった。
 どんなささいな理由であれ、いったん落ち込むと、バンドの舵取りが一切不能となる。
 なだめても、励ましても、持ち上げても、一時的な効果しかなく、ロブが自分で浮上してくるのを待つしかない。
 一度、ライヴ前に何が理由かしょんぼりしていたロブに、デイヴが何気なく話しかけたことがあった。が、どうもそれがロブに追い撃ちをかけたらしく、もうすぐ出番だというのにトイレの個室にこもられたときは、真剣にバンドを脱退しようかと考えた。
 トイレにこもりはしても、その後ライヴをきちんとこなしていたロブはさすがプロだが、リーダーがその役目を果たせないとき、バンドを引っ張るのはなぜかデイヴだった。途中加入にもかかわらず。
「廊下は寒いからとりあえず入れよ」
 デイヴはドアを支え、ロブを迎え入れる。さっきまでステージで吠えていたとは思えない丸い背中を見ながら、ドアを閉めた。

(3につづく。)
 
全編はこちらにupしてあります。
http://homepage3.nifty.com/kreutzer/KiokuStoriesKingFlynnInt.htm