「有名になりたい」>MANSON、"The Nobodies"考

銃乱射事件 遺書や画像を公開
http://www.nhk.or.jp/news/2007/12/08/d20071208000071.html

アメリカで起きたモールにおける銃乱射事件についての続報であるが。
このニュースによると、遺書には

無意味な自分自身の存在に耐えきれず、僕はキレてしまった。有名になりたい。

とある。
いちおー英語ソース↓

Mall shooter's suicide note: 'I've just snapped'

 
ん〜あんまりにMARILYN MANSONの"The Nobodies"そのままだなあ。

We are the nobodies
俺たちは無名だ
We wanna be somebodies
大物になりたいんだ

 
 
こないだMANSONのライヴを観たあと、MANSON(バンド及び個人)についてちょっと調べてからしばらく、この曲のことを考えていた。
 
この曲はもともと、コロンバイン高校銃乱射事件後、マンソンがマスコミや社会で青少年への悪影響の筆頭として批判されまくられたあと、書かれた曲だ。

1999年のコロンバイン高校銃乱射事件では、加害者のエリック・ハリスとディラン・クレボールドがマンソンの影響を受けていたとされた。加害者自身の「マンソンのファンではない」との証言にもかかわらず、多くの保守派メディアは、マンソンの社会的影響を追及した(抗議集会が開かれたり、「マリリン・マンソンは、恐怖や憎悪、自殺や死を広めに来る」といった不条理な讒謗を受けた。とりわけキリスト教信者からの誹謗は強かった)。
 
「マリリン・マンソン-Wikipedia」より

 
この曲で興味深いのは、発表されている歌詞と歌われている歌詞がどうも違う、という点だ。
さきほど引用したように、インナーに印刷された歌詞は、
"We are the nobodies"
なのだが、どうしても、
"Fear the nobodies"
と言っているように聞える。
 
あらためて聴いてみたが、ブリッジ(?)のあとだけはっきり"We are〜"と言っているが、その他のところでは99%"Fear the〜"だと思う。
ただ、
"(We) wanna be somebodies"
も、"wanna"のまえに、"f"ではないが"h"みたいな音がやや入っているから、マンソンの、[w]を発音するときの癖なのかも知れない……とは言っても[h]と[f]は完全に違う音だし、多分、

Fear the nobodies
名もない者たちを恐れよ
who wanna be somebodies
名を成したがっている者たちを

と言っているのだと思う。
 
そう考えると、少し、「nobody」たちに冷たいような感じもするのだが、これは有名になりたくて(?)、あるいは最後の手段として犯罪を起こす少年たちに向けられた曲ではなく社会やマスコミに向けられたものだから、まさに、「恐れよ」と言っているのだと思う。
「名もない人間たち(つまりそれぞれの大人の周囲にいる少年たち)にもっと目を向けよ」
と。
 
社会やマスコミに向けた揶揄は、以下(さっきブリッジと呼んだところ)で顕著だ。

Some children died the other day,
何日かまえ 子供が何人か死んだ
We fed machines and then we prayed,
人々は機械に餌をやってから 祈った
Puked up and down in morbid faith,
祈りの言葉を吐いて 病んだ信仰にひざまずいて
You should have seen the ratings that day...
あの日の視聴率を見たらよかったのに…

以下、ちょっと解説。
"machines=機械"はテレビのこと。
"fed=餌をやった"は視聴率の取れるような出来事について電波に乗せること、のような意味と思われる。
そのあとの一連の文章は、前述したように、キリスト教信者から強く誹謗されたとあるので、その関連。
"the ratings"は複数形なので、ほんとに細かく訳すならば、「各局の視聴率」とするのがパーフェクトかも知れない。
(歌詞対訳の範囲では文が長くなりすぎるのでむりだが。)
 
(と書いてから、↑は一部違うと気づいた。(翻訳はそのままでいい。)
"machines"はテレビってよりテレビ局とかの視聴率リサーチの機械だね。
人々が、テレビなどを観て、テレビ番組などの視聴率に餌をやって(視聴率上げて)、それから祈りにいく、ということだ。
そう考えれば、すっきり。この、「まさにこれだ!」という答えが判ったときの快感があるから、翻訳というのはやめられないのだw その他の翻訳の過程、9割はきわめてマゾ的であるがw)
 
 
マイケル・ムーアの映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」でマンソンは事件に関してインタを受けているが、Wikiより、そのときの彼の発言を引用して、今日のエントリを終えようと思う。

When asked what he would say to the boys if he had the chance to talk to them, Manson replied,
"I wouldn't say a single word to them; I'd listen to what they have to say, and that's what no one did."
もし事件を起した少年たちと話すことができたなら何を言うかとの問いに、マンソンはこう答えた。
「何も、一言も言わない。ふたりの話したいことに耳を傾けるよ、誰もふたりにしてやらなかったことだ」
 
「Marilyn Manson-Wikipedia」より