「維新の身投げ」

ういー。

少しおかしい人どうしの会話を
何バージョンもおこなってみましたが
私の履歴は芳しくない
 
この部屋には今おそらく十数人
私も少しおかしいのをとても申し訳なく思う
これは先天性ですか後天的ですかという質問があって
先天性の私らは部屋の隅に行って
後天性のやつらに何が判るとこそこそ言う
でもよく見ると全員部屋の隅に寄っているのであり
私らは互いの顔を順番に見て黙った
 
あんまり幸せではなかったのです
おかしいと罰せられたので
私らは何かあると黙ることを身につけた
 
もう今日はいつもの店に寄って
昔の文学の話をする
私らの言霊が響いてくるのはだいたいあの時代だ
でも店主の出してくれた皿には見たことのない食べ物が載っている
 
舶来の事物に身を投げた祖先に
私らはもう言うことはない
思えば私の病も
一部は後天的であった
縦のものを横にしたとか横のものを縦にしたということでなく
屈折及び孤立を膠着に変換し続けたことに因る
翻訳は言語への裏切りです
私が言って数人の顔が曇って
店主は暖簾をしまいに外に出た