いまだに新しいQUEENSRYCHEの「Rage For Order」

QUEENSRYCHE、去年の来日は、まっこと書いていいか判らんが、私にはマイナスに作用した。
ライヴが悪かったということは決してない。
  
んだが、多分、目が覚めてしまったのだろう。
96年くらいの来日公演も行って、そのときすでにジェフ・テイトのボーカルが衰えていたことは目撃していたが、それを上回るショックだったのだと思う、去年の来日は。
 
重ねて言うけど、ライヴがひどかったわけじゃない。
質は高かった。
これは確か。
だけど、周囲が言うほど感動できなかったのは、彼らのファンになった90年くらいからの17年間で、彼らが自分の中で最前線たり続けることができなかったという現実が自分にとって大きすぎたからだし、また、「恐ろしい才能を持つ集団」という自分の中の位置づけは衰えなかったものの、結局、去年私に提示されたものは、自分が期待していたものとは少し違ったのだと思う。
「Operation:Mindcrime II」も、ライヴを観たあと再び聴いてみたが、やっぱりだめだった。
(ただこの大きな原因は音の作り方にあると思われる。アナログすぎる音なような??)
 
 
ちょうど今「アナログ」って単語が出てきたので、去年のライヴがどーのという話から離れて本題に入るけど、アナログの対義語の「デジタル」、これが私にとってのQUEENSRYCHEの最大のキーワードだ。
 
それは、初めて聴いた作品が「Operation:Mindcrime」で、過去を振り返っても、あるアルバムを(予備知識なしで聴いて)受けた衝撃のなかで、最も深く大きい衝撃のひとつだったという事実がありながらも、自分の心、意識のさらに深いところにひっかかって離れないもの、それが「Operation〜」の前のアルバム、「Rage For Order」だからだ。
 
「Rage For Order」のキーワードの最大たるものは、ライナーでも伊藤政則氏がさかんに言及している「プログレ」なのだとは思うのだが、私にとっては、それは「デジタル」と同義になっている。
 
プログレは全く門外漢だから語ることはしないが、構築するという手法、入り組ませるという手法、それはもちろんアナログでできることだが、ブレない構築、となると機械の手を借りるほうが正確になる。
音の面で、あの作品でQUEENSRYCHEが用いたのが当時として「デジタル」な手法だったかは素人なので判らないが、歌詞の面からいくと、"Scream in Digital"という曲の存在、また、近未来的世界を描く曲がこの曲に加えて3曲もあることを考えると、彼らの頭に、「機械」を象徴する「デジタル」という言葉がキーワードとして存在したであろうことは、想像の範囲ながら、的外れではないと考える。
 
近未来を描く4曲は以下の通り。

  • Surgical Strike
  • Neue Regel
  • Chemical Youth
  • Scream in Digital

 
機械を人間のために役立てるのか、人間を機械化するのか、その境界線を探るような歌詞の内容は、数々のSF小説SF映画、日本ではSF漫画が模索してきたテーマと通じる。
 
社会/世界の「機械化」が止まらない、という流れは、このアルバムが作られた86年当時よりどんどん加速しているわけだが、政治的な内容を表面に打ち出した「Operation:Mindcrime」と違い、純粋に社会の仕組みそのものを考察するようなこの「Rage For Order」は、その社会の仕組みにおける人間の役割と、人間性とは何たるかの考察を中心に据え、あれから22年を経た今でも、その先鋭ぶりは衰えることがない。
 
音自体が先鋭すぎたこともさることながら、その後映画「マトリックス」でポピュラリティを得た、「自分が『感じる』ということはどういうことなのか」という疑問、その答えへの恐怖、それを描いた歌詞は、アルバム発売後の22年間で人間と機械のありかたが完全に刷新されたかに見える現代においても、やはり先鋭だ。
 
メロウな曲の間に挟まれ異彩を放つ"Scream in Digital"の歌詞は、ぜひ読んでいただきたい。
http://www.darklyrics.com/lyrics/queensryche/ragefororder.html#10
先に書いた、「感じる」とはどういうことなのかという疑問だけでなく、「システム」が家庭単位にまで及ぶこと、自らの出自とアイデンティティの関係、といったテーマまで内包するこの歌詞は、考えれば考えるほどに恐ろしい。
(昔、広瀬和生氏が「このバンドはずっと体制と人間の関係について描いてきた」と言っていたけど、それには全面的に賛同。)
 
 
そういや、こっからはgdgdに書くけどさ、ジェフ・テイトってさ、恋愛の歌詞になるとめちゃ女々しい、てか乙女じゃない?
ずううっと前から気になってんだよね、これ。