「キングがいく-MACHINE HEADによる被害報告編」12

下記はSLAYERとMACHINE HEADを茶化すために書いたフィクションです。

12.
 デイヴが3時間ほど車を走らせると、邸宅クラスの家が並ぶ地域に入った。
 もともと道路区画が整然としているアメリカのなかでも、特に新しい街だからか、高級住宅地には規則的に家が並んでいる。
 グランドキャニオンでおなじみのアリゾナ州、フェニックス。砂漠地帯にできたこの近代都市に、ケリー・キングが住む。
 デイヴは、彼と直接話すべく、同じくアリゾナ州、トゥーソンという街にある実家からここまで出向いていた。
 サンフランシスコでロブから聞いたケリーの電話番号を実家まで持参し、電話した。同じアリゾナからかけたほうが、受け入れられやすい気がしたからだ。
「へー、おまえ、アリゾナ出身なんだ」
 と、『同州作戦』が功を奏したかはわからないが、ケリーの電話での受け答えはごく普通だった。ケリー自身の出身はロサンゼルスだったが、どちらにしろ、親近感が沸いたのだろう。
 それにしても、ロブが言っていたように、電話しても相手にされない可能性も考えていたのに、いざかけてみればあまりに普通で、デイヴは拍子抜けした……とは言え、それは恐らく電話したのがロブではなかったからだろう。
 道路に面して各屋敷の前庭や生垣が続く。道路から見える郵便受け兼表札を追い、デイヴは言われた番地を探した。
 ここ3分ほど車を流しているあいだ、道路の両側に家が点々と並んでいたのが、視界がひらけ、さらに各敷地の面積が大きい地域に入った。
 そこでやっと、目当ての番地を見つけた。
 道路から3メートルほど奥まったところから広い前庭が始まり、乾いた砂にアリゾナのシンボルであるサボテンが植えられている。ところどころ、普通の土が盛られた場所には、一足早く、初夏の花が咲いていた。
 そんな庭を両脇に伸びる私道は20メートルほど続き、その突き当たりに白い壁の建物があった。
 建物の横には黒のポルシェと四駆が並んでいる。デイヴは乗ってきたホンダを四駆の隣に停めた。
 手みやげのビール1ダースを手に車から出、ドアを閉めた音とともに、かすかな緊張が生まれるのがわかった。
 確かに、電話ではケリーは普通だった。
 しかし、今日の訪問には、ケリーからひとつ条件がついていたのだ。
「家に来てもらってもいいって言ってるのは、デイヴをドラマーとして評価してるからであって、おまえのバンドの話はしない。それだけ守ってくれ」
 どうこちら側のペースに懐柔するか。
 アイディアもないまま、デイヴは玄関に向かった。
 
(13につづく。)
 
全編はこちらにupしてあります。
http://homepage3.nifty.com/kreutzer/KiokuStoriesKingFlynnInt.htm