扉の影の女/横溝正史

kreutzer2005-03-23

珍しく本の感想でもいってみるか。
昭和50年発行、収録は表題(長編)と「鏡が浦の殺人」(短編)。
ここで書いたか忘れたけど、高校時代、横溝作品を読破するのが目標のひとつだった。
(全作品を手に入れるのが困難なため)まだ達成してないけど、古本屋で見つけると、つい買ってしまう。この本も古本屋入手なんだけど、にしてもすごい表紙ですね、お姉さんは額にこぶがあるのでしょうか。ある意味この表紙で悪夢が見られそうな悪寒。
  
あらすじとか書くの嫌いなので書かないけど、「扉の〜」でひとつ「おや」と思ったのは、ある意味相棒と言える等々力警部側からの、金田一描写があるところ。
あ、そういや、この等々力警部、映画ではよく加藤武がやっていて(個人的に彼の「判った!」ってセリフに悶える)、あんまり金田一をよく思ってないという設定が多いのだが、小説では全然そういうところはなく、警部と金田一はいいコンピと言うか、適度な距離を置きながら互いを尊敬し合い思いやり合っている感じなのである。
  
病院坂の首縊りの家」の下巻では、金田一が警部の苦悩を察する場面があり、それも珍しいと思ってたのだが、この「扉の〜」ではその逆パターンで、等々力警部、すっからかんになってる金田一におごってやったり、また、事件が解決に向い始めたときに金田一が見せる孤独に心を痛めたり、そんな箇所がある。基本的に、金田一シリーズって、あんまり事件を解決する側の心理描写とか出てこない気がするんで、こういうのに遭遇すると「ふむ……」と思い、自分も彼らの知られざる一面に触れたような気になって、実際に金田一の孤独などに思いを馳せ、ちょっと切なくなったりするのであった。